九州大学 鉄鋼リサーチセンター

センター長あいさつ

センター長 
中島 邦彦

日本の鉄鋼業は,20世紀後半,粗鋼生産量の増加とともに目覚ましい発展を遂げ,それに付随して鉄鋼の生産プロセスや新材料開発に関する研究も活発に行われてきました。大学においても,これまでもっとも重要な研究課題の一つとして位置づけられ,材料系の学科を有する大学には最低一つは鉄鋼関連の研究を行う講座があったといっても過言ではありません。ところが,21世紀に入って,国の重点科学技術施策の中心がエネルギーや環境関連材料などの分野に移行する中,大学での鉄鋼関連の研究を行っている講座は数えるほどになってきています。このような状況が続けば,大学での鉄鋼に関する研究・教育がいずれ消滅することは目に見えています。しかしながら,学生の就職先に目を向けますと,機械系や材料系教室を卒業した学生の多くが,依然として鉄鋼材料が関係する企業(自動車や機械・重工業分野を含む)に就職しており,鉄鋼に関する教育の重要性はなんら変わっていません。

一方,鉄鋼企業においては,国際競争に打ち勝つだけの力をつけるために大幅な人員削減を行ってきており,研究従事者の数も減少傾向にあります。その結果,企業の研究は短期的な実用化研究に集約され,大学に対しては,長期的な展望に立った基礎研究が期待されています。さらに国際的には,中国や韓国を中心としたアジア圏の国々の台頭が著しく,技術面でも猛烈な勢いで日本の鉄鋼業を追い上げつつあります。このように国際的な競争が激化する中,日本の鉄鋼業の高い技術レベルを維持し続けるためには,優秀な人材の育成と同時に,基礎から応用にいたる系統的な研究を産学が連携して継続的に行っていく必要があります。

官営の製鉄所が北九州に開設されたという歴史的背景もあり,九州大学には,鉄鋼の生産・加工から組織制御や特性評価にいたる広範な学術領域をカバーする研究者がそろっています。そこで,九州大学は平成17年度の新キャンパス(福岡市西区元岡地区)への移転を機に,新たな研究戦略として鉄鋼に関する研究・教育を強力にバックアップするための「鉄鋼リサーチセンター」を設置いたしました。本センターは,将来の鉄鋼技術を支える先導的かつ基礎的な研究を企業と連携して戦略的に推進します。とくに,企業と大学とが連携して取り組まねば解決できない課題については,企業から迎えた専任教授を核として新たな産学間の連携スタイルを構築し,他の大学や公的研究機関の研究者の協力も得ながら共同研究を行っております。一方,教育面では,社会で即戦力として通用する優秀な人材を育成することを目的として,企業における『産学連携講義』を大学院教育に導入しています。本講義では,鉄鋼の生産に直結した応用技術に関する授業を行うのみならず,現場での実習を織り込んだ実践教育を行っています。将来的には,国内のみならず国外の研究者との連携をさらに強化し,鉄鋼の分野で世界のCOE(Center of Excellence)になることを目指していますので,皆様の積極的なご支援をよろしくお願いいたします。

九州大学 鉄鋼リサーチセンター
センター長  中島 邦彦